パニック症とは
何の前触れもなく、ある時突然、息が苦しくなったり、めまいや動悸などに襲われるといった“パニック発作”を起こし、そのために生活に支障をきたす疾患がパニック障害です。
その時の不安と恐怖は大変なもので、死んでしまうのではないかと思うほどの激しい発作に見舞われ、しばしば救急車で病院に運ばれますが、通常は30分ほどで症状は治まります。パニック症の発作で死ぬようなことはありません。
息苦しさや動悸のため、心臓や呼吸器、胃などの疾患が疑われることがありますが、どこを調べても体に異常が見られず、何でもないと言われてしまうことも少なくはありません。
明確な診断結果が得られないまま病気が進行していくと、発作が起きた場所を無意識的に避けるようになったり、発作の再発を恐れたりする(予期不安)あまり、外出できない、乗り物に乗れないなど、日常生活に大きな支障が出やすくなります。
自然に治ることはあまり期待できず、多くの場合、治療に数か月あるいは年単位かかることがあるため、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら慢性化してしまいますが、適切にに治療を行えば、日常生活にまったく支障のない状態まで改善を期待できる病気です。
なお、うつ病やうつ状態を併存することが多い事も知られています。
パニック発作の主な症状について
- 胸がドキドキする
- 息が苦しい
- 息がつまる
- 冷汗をかく
- 手足や顔のふるえ、しびれが生じる
- 胸の痛みや不快感をもよおす
- めまい、ふらつき、気が遠くなるような感じがする
- 自分が自分でないような感じがする
- 寒気、またはほてりを感じる
- 発作による突然の死の恐怖に見舞われる
パニック症の原因
最初に発作が起きる原因には、過労やストレスなどが関係していると推測されています。その後、再発することへの強い不安(予期不安)によって発作が起こり易くなる場合もあります。
また、ストレスや脳内の神経伝達物質の働きが関連すると言われています。人間の脳には数多くの神経細胞(ニューロン)や受容体(レセプター)が存在し、その間を情報が行きかうことで感情、知覚、運動、自律神経などの働きが生じています。その働きのどこかにいわゆる誤作動が生じることによってパニック発作は起こるのではないかと推測されています。
パニック症の治療
パニック症の治療は、薬物療法が基本となります。
一般に、最初に使われる薬はSSRI(セロトニン再取込み阻害薬、抗うつ薬)と抗不安薬のベンゾジアゼピン系薬剤です。
パニック発作が初めて起きた時から時間をおかず、早めに治療を受けると、治療効果が上がりやすいようです。またパニック症は薬物療法が効果を発揮しやすい障害です。「薬に頼らず気持ちだけで治す」というのは得策ではありません。薬によって発作が治まる、あるいは薬で発作を抑えられると実感できるようになると、少しずつ自信が回復し、予期不安も減ってきて、そのことが発作の出現をさらに減らすことにもつながっていきます。
またパニック症では、薬物療法に加え、精神療法を併用することが重要です。認知行動療法(考え方や物の捉え方、行動を柔軟に選択出来ることを目指す精神療法)は、薬による治療と同じくらいパニック障害に効果のあることが認められています。
薬が効き始めて発作が起こらなくなってきたら、苦手だった外出などに少しずつ挑戦することも治療になります。ただ、無理は禁物なので、医師やカウンセラーと相談しながら、一歩一歩ゆっくりと前進していくつもりで治療に取り組んでください。